今さら聞けないコーヒーのはなし
精製について

精製とは?

「コーヒーのことをもっと知りたい」そんな声にお応えすべく、コーヒーボーイの焙煎担当・金近が誰にでもわかるコーヒーのおはなしをお伝えするコーナーです。第三回目はコーヒー豆の精製方法のご紹介です。 僕たちが普段見ているコーヒー豆。 このツヤツヤした褐色の豆に出会うためには精製・焙煎という作業が必要です。 中でも精製は、方法の違いでコーヒーのフレーバーや香りを大きく変える役割を担っています。 【そもそも精製ってなんなのでしょう】 コーヒー豆はチェリーと呼ばれるコーヒーの実の種子の部分にあたります。 簡単にいうと実から種(コーヒー豆)を取り出す作業、これが精製と呼ばれる工程というわけです。 精製方法には、代表的なものに「ナチュラル製法」「ウォッシュド製法」があります。 ナチュラル製法: 収穫したチェリー(コーヒーの実)をそのまま天日で乾燥させてから一定期間寝かせ、乾いた果肉とパーチメント(内果皮)などを取り除く作業―脱穀―をして生豆を取り出す方法です。 自然乾燥式、アンウォッシュド、非水洗式と呼ばれることもあります。 コーヒーの自然の風味を強く残す精製法で一度飲めば記憶に残る風合いが特徴。 ブラジルやエチオピアなど雨が少ない地方に多く用いられています。 ウォッシュド製法: 現在最も多く採用されているウォッシュド製法は、収穫したチェリーを1度水洗し、果肉とミューシレージという粘液質な部位を取り除いてから乾燥させる方法です。 ナチュラル製法では乾燥に多くの時間を費やすことから、時間短縮のために考えられた製法です。 キレのあるクリーンな味わいが特徴。 主な採用国は中南米、カリブ海諸国、アジア、アフリカなどで、コーヒー生産国のおよそ7割がこの精製方法を用いていると言われます。

 

*画像は収穫されたコーヒーチェリー ナチュラル製法とウォッシュド製法の中間にあたる「セミウォッシュド(半水洗式)」と呼ばれる製法もあります。 マンデリンで有名なインドネシアのスマトラ島で生まれた「スマトラ式」と呼ばれる精製方法もその一つで、ウォッシュド同様チェリーの果肉を水洗いして取り除き、その後ミューシレージが残った状態で予備乾燥をして脱穀をし、最後に本乾燥をして仕上げる方法です。 乾燥の工程が2度に分かれているためそれぞれの乾燥時間が短くなる利点があり、チェリーの収穫期に雨が多い土地ならではの精製方法と言えるでしょう。 近年ではベーシックな製法を基にした新しいプロセスも生まれています。 その背景にはスペシャリティコーヒーの人気の高まりにつれてコーヒーのフレーバーに多様性が求められるようになったことが挙げられます。 中でもここ数年人気が高いのが「ハニー精法」です(ハニー製法自体は古くからある製法です)。 ミューシレージを完全に除去せずにチェリーの持つ甘味や果実感を豆に残す方法がハニー製法の特徴です。 甘さ成分が含まれるミューシレージの残す率を変えることで、バリエーションのある風味を作り出すことが可能になります。 「ハニーのバリエーション」 ■ブラックハニー / ミューシレージ残量50%以上・長期乾燥させる ■レッドハニー / ミューシレージ残量50%以上・短期乾燥させる ■イエローハニー / ミューシレージ残量25%以上50%未満 ■ホワイトハニー / 75%以上のミューシレージを除去 ハニーというからにはハチミツの風味?と想像してしまいがちですが、スペイン語のミューシレージ=Miel(ミエル)がハチミツと同じ綴りのためにHoney(ハニー)と呼ぶようになったそうです。

 

【勢いを増す新しい波】 精製の過程で新しい工程を追加するなど今までになかった加工方法も生まれています。 その代表格として、このところ一気に拡大してきた「嫌気発酵(けんきはっこう)」があります。 精製する過程でコーヒーチェリーを酸素が遮断された完全密閉のタンクに貯蔵し、発酵させる方法です。 嫌気発酵はワインの製造工程で用いられるなど以前からあった技術ですが、コーヒー豆の精製においては発酵の際に(コーヒーチェリーは自然乾燥でも発酵する)酸素を嫌う発酵酵母の活性を促すために取り入れられました。 嫌気発酵の最大の魅力は深みのある味わいを実現できることで、赤ワインやモルツ、フルーツ、スパイスなどを感じさせるボディ感のしっかりとしたコーヒー豆が出来上がります。 ナチュラル製法の嫌気発酵をアナエロビック、ウォッシュドではカーボニックマーセレーションとそれぞれ個別の名称で表されることもあります。 さらに、今一番新しく、ある意味で物議を醸しているのが「インフューズド」と呼ばれる加工方法です。 嫌気発酵から派生したもので、フルーツなどと一緒に無酸素状態のタンクにチェリーを入れ発酵させる方法です。 コーヒーだけでは表せないフルーツの香りや味わいが楽しめることで新しいコーヒー(フレーバーコーヒー)として取り上げられていますが、人工的な香料を混ぜる製造者も出てくるなど本来のコーヒー豆とは離れていくことも懸念されています。 【生産者の顔が見えるコーヒー豆】 コーヒー豆のラベルをよく見ると「モカ・イルガチェフェ・アナエロビック・ナチュラル」などと長い名称が付けられていることがあります。 これらはもちろん豆の名前なのですが、一つ一つを読み解くと品種や生産国・生産地、時には農園の名前、精製方法が記載されているのです。 近年、食品のトレーサビリティが言われていますが、コーヒー豆はまさにトレーサビリティの先駆けなのではないでしょうか。 育った環境や豆になる工程を想像させてくれる一粒のコーヒー豆。 今日の一杯は関わった人たちへと思いを馳せながら味わってみませんか?

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