【深煎り】ストレートコーヒーの
『きれいな苦味』を引出すハンドドリップ法

最終更新日:2023/12/03

深煎りコーヒーは、焙煎の最終段階で現れる
苦味と濃厚感を味わうコーヒーです。
この焙煎域の豆は、焙煎時の炭化にともない、
ネガティブな要素を多く含むようになります。
このレシピでは、アクや雑味を避け、
深煎りらしい「きれいな苦味」を引出す
ハンドドリップの方法を解説します。

今回ハンドドリップに使う器具は、
世界で広く愛用されるハリオ Vシリーズです。

ハンドドリップには必要な器具が5つあります。
中でも重要な2つが、コーヒー粉を濾すためのドリッパーと、濾したコーヒーを受けるサーバーです。
今回は、プロの方にも広く使われている
ハリオ社Vシリーズを使用します。

豆はどなたにも入手が容易な
ストレートコーヒー豆です。

ハンドドリップに使う豆は、
ウェブ上でも、お近くの自家焙煎豆専門店でも
入手が容易なストレートコーヒー豆です。
中でも深煎りの代表格、インドネシア産マンデリンを使用します。

レシピは'17年日本ハンドドリップチャンピオンシップ決勝大会出場 光店守本店長です。

おいしいハンドドリップコーヒーへの第一歩は、粉やお湯の量、温度や時間を意識する事から始まります。
記事内では計量器を用意できない方への、対処法なども解説しています。
このレシピで、あなたがハンドドリップの入り口に立てることを願っています。光店店長 守本雅美

さあ、ハンドドリップを始めましょう!

1. ハンドドリップ初心者の方へ - 器具の紹介。
プロが使う道具には理由があります。

①ドリッパーはハリオ社 V60 ドリッパー02クリアがお勧めです。

ハンドドリップは、コーヒー粉にお湯を注いだ時に、
抽出されるコーヒー液を濾す事で
コーヒーを淹れる方法です。

その時のドリッパーの役割は、
・コーヒー液を均一に漉せること
・注ぐお湯の量で、濾す速度が調整できること

の2つです。

速度調整は、自分好みのコーヒーを淹れるために欠かせない技術です。
このV60ドリッパーは、コーヒー液が360°から1つの穴に均一に落ちていくので、
速度調整がしやすい設計になっています。

1-4人分を一度に抽出できるV60ドリッパー02クリアをおすすめします。

V60ドリッパー 02クリア

●VDR-02-T ●透明 ●幅137×奥行116×高102mm●口径116mm ●1-4杯用
*価格はご自身で確認ください。

*HARIO オフィシャルサイトはこちら

②サーバーはハリオ社 V60コーヒーサーバー700がお勧めです。

サーバーは、
・メモリが付いて、内容量が分かるもの
を選んでください。

ハンドドリップは何度かに分けて、お湯を注ぎます。
そして、注いだ湯量を知ることがとても重要です。

スケール(計量器)を用意することをお勧めします。
用意できない時は、サーバーのメモリで代用します。

ドリッパーと統一デザインの
V60コーヒーサーバー700がおすすめです。

V60コーヒーサーバー700

●VCS-02B ●ブラック ●幅180×奥行125×高133mm●口径92mm ●容量(バンド下)700mL
*価格はご自身で確認ください。

*HARIO オフィシャルサイトはこちら

③ドリップケトル

ケトルは、
・注ぐお湯の太さを調整できる
専用の細口ケトルを用意してください。

またお湯の温度調整は、豆の異なる特性を引き出すために欠かせない要素です。
湯温計を用意するか、用意できない時はケトル内で温度調整をします。その方法は後述いたします。

注ぎやすい、お好きなケトルを選んでください。

④ペーパーフィルター

ペーパーフィルターは
V60ドリッパー02クリアに適合にする
・円錐形 1〜4人分サイズ
を選んでください。
できる限り匂いのない蛍光染料不使用 、接着剤不使用が良いでしょう。

COFFEEBOYではネルドリップの質感に近い、
オリジナルペーパーフィルター「DRIP GIRL」を発売しています。

DRIP GIRL 1-4人 円錐形

●蛍光染料不使用 ●接着剤不使用● 60枚入り ●日本 / 528円

*DRIP GIRL 購入ページはこちら

⑤計量スプーン

計量スプーンは
・V60サーバーに付属のスプーン
が十分に役割を果たします。
コーヒー粉ならすりきり12gが計れます。
内側には8/10/gの目安が付いています。

自分好みの豆や粉の量を目分量で量れるようになれば、コーヒーライフも楽しくなります。

1のまとめ_器具の紹介。
広く使われている器具には理由があります。

1. ドリッパーは、ドリップの速度が調整しやすいV60ドリッパーがおすすめです。
2. サーバーは、内容量が分かる目盛り付き、V60コーヒーサーバーがおすすめです。
3. ケトルは、注ぐお湯の太さが調整できるものを選びましょう。
4. ペーパーフィルターは、ドリッパーに適合する無臭のものを選びましょう。
5. 計量スプーンは、V60コーヒーサーバーの付属品が使えます。
*ハリオ社Vシリーズ オフィシャルサイトはこちらから

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2. 豆の紹介。深煎りの特性が活かされる
インドネシア産マンデリンを使用します。

インドネシア産コーヒー豆について。

インドネシアは赤道直下で雨が多く、土地は肥沃で食物がよく育ちます。
コーヒーも中米のようなプランテーションではなく、
稲や野菜と同じようにひとつの作物として栽培されているのが特徴です。

昨今、浅煎りのフルーティーなコーヒーは世界で確実に増えていますが、
一方、深煎りでしっかりとした風味、
特に質感を表現できるコーヒーは少なくなっているようです。

そんな中でマンデリンは、
世界のダークローストファンを魅了し、確固たる地位を築いてきました。

コラム : コーヒー豆の話をしましょう。_02

●2度爆ぜる。● ダークロースト用の生豆は、深い煎りにも炭化をせずに耐えられる本来の強度を備えています。

コーヒー豆の話をしましょう。_02は >>>こちらから

「マンデリン・ロースト8」。
焙煎/味わい/フレーバー/酸味について。

マンデリンが世界にコーヒーファンを持つ理由は、そのユニークな精製方法にあります。

スマトラ式と呼ばれるその方式は、高温多湿の気候に合わせて生まれた乾燥方法です。
水分量の多い鮮やかなグリーン色の生豆が、その色素を残したまま精製されます。

この方式が、深煎りしたときに他の豆にはない独特の味わいを見せます。
ロースト8、つまりフレンチローストまで焙煎することで
口に含んだときの重厚感やタラゴンのようなスパイシーさが生まれます。

また、コーヒーのお供に生クリームたっぷりのスイーツとも
十分にマリアージュできる濃厚なボディ感がマンデリンの特長です。
週に1度、少し遅いコーヒータイムにお楽しみください。

マンデリン・ロースト8についてお話しします。



*マンデリン・ロースト8のご購入は >>> こちら

2のまとめ_豆の紹介。
今回ハンドドリップをする豆はインドネシア産マンデリンです。

1. インドネシアは赤道直下にある肥沃な土地を持つ国。コーヒーの栽培に適している。
2. スマトラ式と言われる特殊な精製方法により、世界のダークローストファンを魅了する。。
3. 8番目のロースト、つまりフレンチローストまで焼き進める事で、他の豆にはないスパイシー感が生まれる。
4. 濃厚なスイーツともマリアージュするボディ感がマンデリンの特長。

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3. さあ、ハンドドリップを始めましょう。
コーヒー粉とお湯を用意して、第1投。

コーヒー粉について。中粗挽き/中挽きのコーヒー粉 20gを用意しましょう。

このレシピでは、コーヒーマグカップで1杯分。およそ200mlをハンドドリップします。
200mlのコーヒーを抽出するために必要なコーヒー粉は20gです。

豆で購入し、ご自身で挽かれる場合は中粗挽きに設定してください。粗さは画像のような感じです。
挽いた状態で購入される場合は、中挽きを選択してください。

Q. なぜ、中粗挽きなのでしょうか?

A. 挽き目を細かくするとコーヒー粉にお湯が早く浸透し、抽出時間が短くなります。思い通りのコーヒーを淹れるためには、ある程度の抽出時間が必要です。中粗挽きにする事で抽出時間が長くなり、味をコントロールしやすくなります。

詳しくは『ハンドドリップ 基本のアイデア。落ち切り、レシピ開発、抽出時間について。』へ。

お湯について。湯温85℃を260ml用意しましょう。

200mlをハンドドリップするために必要な湯量は260ml(仕上がりの1.3倍)です。
また、深煎りの抽出に最適な湯温は85℃になります。

湯温計をお持ちなら正確に測ってください。

湯温計が用意できない時は、
・お鍋でお湯を沸騰させる
・火を落として(ぐつぐつの状態から)お湯を落ち着かせる
・常温のケトルに指定の湯量を注ぐ(常温に注意)
・その過程で湯温はおよそ90℃前後になります。
・さらに少し時間をおいて冷ましてください。


仕上がりの温度は、およそ75℃です。
様々な要素をバランスよく感じることのできる温度です。

Q : なぜ、湯温は85℃なのでしょうか?

A. 1つはマンデリンの持つスパイシー感を強調させるためです。もう1つは、深煎りの豆は水分の含有量が低く、高温のお湯を注ぐと一気にコーヒーが抽出されてしまいます。湯温を低くすることで抽出時間を長くし、味のコントロールをしやすくします。

1投目。コーヒー粉を蒸らします。
その湯量と時間について

さあ、ハンドドリップのスタートです。
(以下、お湯を注ぐ事をドリップと言います。)

ペーパーフィルターをセットして、コーヒー粉を20g入れましょう。
1投目は「蒸らし」です。
乾いた粉にお湯を満遍なくドリップしましょう。
画像(3段目)のようにコーヒー粉が膨らみ、コーヒー粉が抽出の準備をします。

蒸らしの湯量は50ml(50 g)です。
スケール(計量器)を用意できる時は、
・サーバーにフィルターをセット、コーヒー粉を入れた状態で0gにセットてください。
・蒸らしのお湯を50ml(50g)ドリップしてください。


スケールを用意できない時は、
・サーバーに滴がしたたるまで注ぎましょう。
最終的にサーバーの底に薄くコーヒー液が溜まる状態になります。

蒸らしの時間は、深煎りの場合、50秒間です。(注ぐ時間=約10秒 蒸らし=40秒)

Q. 蒸らしの前にペーパーフィルターを濡らした方が良いですか?

A. クラフト色の みさらしフィルターはリンス(濡らす)をお勧めします。匂いの除去がされていない場合があります。漂白済の白いフィルターは、リンスしなくても味には影響はありませんが、私はリンスをする派です。

リンスについて詳しい解説は >>> こちら

3のまとめ_さあ、ハンドドリップを始めましょう。
コーヒー粉とお湯を用意して、第1投。

1. このレシピでは、およそ200mlのコーヒーをハンドドリップで抽出します。
2. コーヒー粉は、中粗挽き/中挽きを20g用意してください。
3. お湯は85℃、260mlを用意してください。
4. 蒸らしの湯量は、50ml。コーヒー粉に満遍なくいき渡らせます。
5. スケールがない時は、サーバーに滴がしたたるまで注いでください。
6. 蒸らしの時間は、注ぐ時間を含め50秒間です。

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4. 2投目。
その時間とプア・ポイント(湯を注ぐ位置)は?

2投目。コーヒーの主な成分抽出、味形成です。

2投目。
【深煎り】コーヒーのハンドドリップで大切なことは、
焙煎時に発生した雑味を抽出しない様にドリップをすることです。

蒸らしで膨らんだコーヒー粉の頂点に、
細いお湯をス〜と注いでください。
ケトルを動かさずドリッパーの中心だけを目掛け、
210ml全ての湯を注ぎきりましょう。

このドリップ方法を『センター・プア』と言います。
(プアは英語で注ぐ:pourを意味します。)

210mlを注ぐ時間は約1分40秒、
2投目の工程は約2分10秒です。(注ぐ時間=100秒 落ち待ち=30秒)

濃さを調整したい時は、注ぐ速度やお湯の太さで調整してください。
・薄くしたい時は、
湯を太く注いで、サァ〜と早く落としてください。
・濃くしたい時は、
中心から小さな円を描くように細いお湯を注いでください。


さあ、コーヒーがサーバーへ落ち切ったら、
深煎りストレートコーヒー、ハンドドリップの完成です!!!

Q. ハンドドリップ のよくある質問_落ち切りについて。

A. 最後にドリッパー内のコーヒーを落とし切るか、ドリッパーを引き上げるかは、とてもよくいただく質問です。お答えは、抽出に掛かった時間で判断をします。

詳しくは『ハンドドリップ 基本のアイデア。』>>> をご覧ください。

『きれいな苦味を引出すハンドドリップ 』のレシピMAP。

深煎りストレートコーヒー
ハンドドリップ レシピのまとめ

○仕上がりのコーヒー量 -200ml
○コーヒー粉 -20g / 中粗挽き
○注ぐ湯量/湯温 -260ml / 85℃
○仕上がるまでの時間 -およそ3分00秒
●1投目 【 蒸らし 】
注ぐ湯量 -50ml
時間 -50秒(注ぐ時間=10秒+蒸らし=40秒)
スケールが用意できない場合 -サーバーへ滴が垂れるまで
●2投目 【 コーヒーの味形成 】
注ぐ湯量 -210ml
注ぐ範囲/プア・サークル -中心のみにドリップ / センター・プア
時間 -100秒(およその注ぐ時間) -130秒(落ちきるまでの時間)

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5. 抽出後に行う事。
そして【 1:10:13 】と【プア・サークル】の方程式。

サーバー内のコーヒーを
攪拌(かくはん)してください。

ドリップしたサーバー内のコーヒーは、
上部と底部で、大きく濃度が違っています。

サーバーを揺すって、または杯数が多い場合にはマドラーを使って
濃度が均一になる様に攪拌をしてください。

実は、このレシピを開発した守本店長にも苦い体験があります。
2018年日本ハンドドリップ選手権で、審査員に提供したコーヒーの濃度にばらつきがありました。
それが理由で予選の通過を逃した経験があります。

どなたもが堪能できる様、しっかり攪拌をしてください。

注ぐカップはしっかり温め、サーブは美しく。

85°でドリップをした後、コーヒーの温度は幾らか下がっています。
カップを十分温めてからコーヒーを注いでください。

そしてコーヒーを注ぐのは、お客さまの目の前で。
綺麗な所作でサーブすると一層美味しくなります。

ハンドドリップは、コーヒーの世界を広げてくれます。光店守本店長

深煎りのハンドドリップ解説、いかがでしたか?

一つ、提案があります。
このレシピを試された後、今度は湯温を78℃に下げて、抽出をしてみてください。
これまでになくスパイシーで味わい深いマンデリンを発見できると思います。

コーヒーは、時間の経過によって移りかわるカラフルさを楽しむ飲み物でもあります。
そんな味わい方を知っている方なら、きっと喜んでいただけるはずです。

このレシピは、深煎りハンドドリップ法の一つの目安にしか過ぎません。
様々なハンドドリップを思考錯誤して、
ぜひ、あなた の、マンデリンと出逢ってください。

コーヒーの世界を広げましょう。

●の、コーヒーを探しましょう。
●ハンドドリップを始める方へ。基本の抽出法。
● ハンドドリップをもっと学びたい方へ。

*光店 守本店長のページはこちら

美味しいハンドドリップの方程式
【 1:10:13 】と【 プア・サークル 】

●【 1:10:13 】は、多くの方に美味しいコーヒーをお出しする時の、分量の方程式です。

・ 1:10:13は、粉の量:仕上がりのコーヒー量:注ぐ湯量の比率です。
・ 仕上がりのコーヒー量は、カップの形状によって変わります。
・ 標準的なコーヒーカップは160ml、マグカップは200mlになります。
・ 例えば、コーヒーカップ2杯分は、粉の量32g、仕上がりのコーヒー量320ml、注ぐ湯量416ml
・ マグカップ3杯分は、粉の量60g、仕上がりのコーヒー量600ml、注ぐ湯量780mlになります。
* スペシャルティコーヒーの場合は、比率が【 0.9:10:13 】に変わります。
*【壁を崩しながら】スペシャリティコーヒーの 『明るい酸味』を引出すハンドドリップ法 >>> こちらから

●【 プア・サークル〈プア/pour=注ぐ〉 】は、2投目以降に注ぐお湯の『円』の大きさを表します。

・ 雑味などを避けるため、焙煎度でドリップの円の大きさが異なります。
・ 1投目の蒸らしは共通です。コーヒー粉にお湯を満遍なく行き渡らせてください。
・ 2投目以降↓
・【中煎り】は、500円玉大にドリップしてください。
*【中煎り】ストレートコーヒーの 『 甘さとコク』を引出すハンドドリップ法 >>> こちらから
・【深煎り】は、1円玉大に、ほぼ中心を目掛けてドリップしてください。
*【深煎り】ストレートコーヒーの『きれいな苦味』を引出すハンドドリップ法 >>> こちらから
・【中浅煎り】は、500円玉大に、中煎りよりもゆっくりとドリップしてください。
*【中浅煎り】ストレートコーヒーの 『穏やかな酸味』を引出すハンドドリップ法 >>> こちらから
・【壁を崩しながら】の抽出は、ペーパーフィルターの際5~8mmまで円を広げてドリップしてください。
*【壁を崩しながら】スペシャリティコーヒーの 『明るい酸味』を引出すハンドドリップ法 >>> こちらから
・ いずれもクリアできれいなコーヒーが抽出できます。

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深煎りのきれいな苦味を引出すレシピで、
美味しく抽出できる4種の豆を紹介。

:フレンチ・ロースト / 酸味1 / 甘味3 / 苦味5

:フルシティ・ロースト / 酸味1 / 甘味3 / 苦味4

:フルシティ・ロースト / 酸味3 / 甘味3 / 苦味4

:フルシティ・ロースト / 酸味2 / 甘味4 / 苦味4

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